現在、全世界で話題沸騰中のクリストファー・ノーラン監督最新作『TENET(テネット)』
世界各国(日本含む)で、初登場1位を記録している『TENET』を見てきましたので、感想や観る前に知っておきたい予備知識についてご紹介します。
- 『TENET』って映画館に行くほど面白いの?
- 難しいらしいから予備知識が知りたい!
この記事では「TENET」を見た感想と、まだ見ていない人の為に初めての人でも映画「TENET」を理解できるような予備知識を紹介しています!
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映画『TENET(テネット)』を見た感想
20年9月18日、巨匠クリストファー・ノーラン監督(『インセプション』、『ダークナイト』『インターステラー』など)の最新作『TENET(テネット)』が公開されました。
本作を封切前から楽しみにしていたのですが、先行上映などで鑑賞した方たちの評価が非常に高いものの、気になる文言もチラホラ。
ノーラン史上「最高難度」やら、「謎が多い」やら・・・。
クリストファー・ノーラン監督作品らしく、今作も難しいとのことで、少し躊躇いながらも、「まぁ、理解せずとも楽しもう」との気持ちで見てまいりました。
感想としては平凡ですが、非常に面白かったです。
まず、メインストーリーは「世界を救え」といった正統スパイものに近い感じで、分かりやすい内容でした。どちらかというと、メインのストーリー自体は単純かもしれません。
ただし、その世界観を構築している「設定やルール」が、非常に難解なSF要素を含んでおり、なおかつ、その「設定」やら「ルール」が特殊な映像として表現されています。
少し大げさかもしれませんが、「これまで観たことのない映像体験」を味わうことができました。このような未知なる映像体験と遭遇したのは、映画『マトリックス』以来かもしれません。
とはいえ、この特殊な映像体験が、ストーリー上の要所で度々出てきます。
初見の人間が脳で処理できるような単純な映像表現ではないため、映画鑑賞中は常に、動く騙し絵を見ているようでした。
ストーリー自体は単純なのに、映像を理解するのは不可能に近いという意味で、本当に難しい映画であったなと思いながら、こちらの記事を執筆しています。
基本的に、一度だけではなく、二度、三度の鑑賞を前提に作られているような映画でしたので、一度目は「理解をするな、感じろ!」の精神で鑑賞するのをおススメします。
映画『TENET(テネット)』のあらすじ
満席の観客で賑わうウクライナのオペラハウスで、テロ事件が勃発。
罪もない人々が犠牲になるのを阻止するべく、すぐさま特殊部隊が館内へと突入する。
特殊部隊に参加していた主人公の「名もなき男」は、激しい銃撃戦が繰り広げられる館内からの脱出に成功するも、テロ組織に捕らえられてしまうのだった。
身分がバレる前に「自害用ピル」の摂取に成功したと思われた「名もなき男」だが、その薬はなぜか鎮痛剤にすり替えられていたのだ。
昏睡状態から目覚めた「名もなき男」は、フェイと名乗る男から“あるミッション”を命じられる。
それは、未来からやってきた敵と戦い、第三次世界大戦から世界を救えというものだった。
未来では、「時間の逆行」を可能にする装置が開発されており、人や物が過去へと移動できるようになっていたのだ。
ミッションのキーワードは【 TENET 】
「その言葉の使い方次第で、未来が決まる」とフェイは言う。
謎のキーワード「TENET(テネット)」を与えられ、第三次世界大戦を防ぐミッションに挑むこととなった「名もなき男」は、任務を完遂することが出来るのか。
そして、彼の名前が明らかになる時、大いなる謎が解き明かされるーーー。
映画『TENET(テネット)』を観る前に知っておきたい予備知識
映画『TENET』を初見でも楽しめるよう、予備知識として3つをご紹介します。
もちろん、ネタバレは含みません。
そもそもTENETという言葉の意味は?
映画のタイトルにもなっている「TENET(テネット)」とは、そもそもどういう意味なのか。あまり聞き馴染みのない言葉ですので、まずは「TENET」について解説します。
まず、英単語としての「Tenet」という言葉が持つ意味は、『(集団としての)主義や教義』となっています。
確かに、物語のメインテーマでもある「第三次世界大戦を防げ」というミッションは、“登場人物たちにとっての思想”とも理解できるため、あながち間違ってはいないでしょう。
しかし、あらすじ上でも書かれているように、「その言葉の使い方次第で、未来が決まる。」という重たい雰囲気を前提に考えると、やや違和感を感じるのも事実です。
実はこの「Tenet」という言葉は、単純な英単語という側面以外にも、3つの側面を持ち合わせているのです。
一つ目は、単純な『回文(お茶で有名な「山本山」のような)』という側面です。
Tenetを逆さまから読んでもTenetとなり、映画のキーワードである”時間の逆行”を想起させるものです。
2つ目は、紀元79年に火山の噴火により滅亡したポンペイ遺跡からの出土品『SATOR(セーター)式回文』ではないかと思われる側面です。以下は最も有名な方陣型のSATOR式回分です。
この方陣は四方向どこからでも読めるように構成されています。中央に配置された”Tenet”という単語だけは上下左右どこから読んでも”Tenet”となっており、他の4つの単語(Sator、Arepo、Opera、Rotas)は、逆から読むと同じ文字を使った対となる単語が現れます。
ラテン語の翻訳として有力なのは、『農夫のアレポは牛鋤(ぎゅうすき)を曳いて仕事をする』というものですが、”Arepo”の意味については正確な解答が無く(分からず)、様々な解釈があるようです。そのことからも、これら5つの単語を文章として捉えたとき、無限の読み方が可能となってしまい証明することも不可能とも。考古学的には永遠の課題といわれているのが、このSATOR式回文です。
また、ポンペイ遺跡からの発掘に留まらず、洋皮の聖書や教会、様々な年代や地方からも発見されていることからも、この方陣自体が何かしらの教義的な意味を持っているとも考えられています。
ではこの方陣を、映画『TENET(テネット)』のキーワードとして捉えた場合はどうなるか。
実は、4つの単語全てが物語上重要な、“登場人物または場所”を指しているのです。それぞれの詳細は省きますが、あらすじにも「オペラハウス」が登場しており、公式サイトで公開されている悪人の名前も「セイター」です。アレポやロータスという単語も劇中に登場しますので、ぜひ映画館で確かめてみてください。
最後は、『Ten(10)』という数字的側面を持っている点です。(ギャグではありません)
『TENET』という文字列を前後で分解すると“TEN+NET”となり、前から読んでもTen(10)、後ろからもTen(10)という数字が浮き彫りになります。このTen(10)という数字も物語上重要な要素を含んでいるため、こちらも映画館で確かめてみてください。
時間の逆行とは?タイムトラベルとの違いは?
映画『TENET』は王道のスパイ映画でありながら、SF要素として「時間の逆行」をコンセプトに制作されています。
「時間の逆行」という言葉は聞き馴染みのない言葉で、劇中でも「タイムトラベル?」「いいや」・・・という会話が出てきます。しかし、「理解するより感じろ」的な映画の流れから、「時間の逆行」に関する説明はそれほどされていません。
初見で『TENET』をあまり理解できないのは、映像で表現されている「時間の逆行」が、私たちの頭を混乱させるためです。
簡単に「タイムトラベル」と、「時間の逆行」の違いをまとめると以下の図解のようになります。
- 「タイムトラベル」は、現在を起点に行きたい時間(未来や過去)へワープすることです。
- 一方、「時間の逆行」は、現在を起点に行きたい時間(過去)まで、遡ることを指します。
例えば、10分前の世界に行きたい場合は、物理の法則が狂い、モノもヒトも逆再生されている空間を、10分間かけて遡ります。
図解上では、白抜きされたヒトの絵の部分が「時間の逆行」を表しており、この部分が映画『TENET』では「逆再生」のような映像として表現されています。
クリストファー・ノーランの実写主義
映画『TENET』を楽しむための、予備(豆知識)を一つご紹介します。
クリストファー・ノーランは稀代の『実写主義』監督として有名です。昨今、CGを多用する映画が多い中で、爆破シーンなど含めて、全てを実写で撮影するという拘りよう。
今回の映画『TENET』でも、実写主義の拘りは輪をかけて激しくなっており、カーチェイスのシーンでは、実際の高速道路を封鎖して撮影に臨んだとのこと。さらに、映画中盤で描かれる大規模な爆発シーンでは、本物の〇〇〇を惜しげもなく爆発させています。
〇〇〇はぜひ映画館でチェックしてくださいね!
「こんな映像も実写で撮影できるの?!」と、予め実写だと知っていると、驚くようなシーンばかりです。ぜひ、圧巻の実写映像を、劇場でご覧ください。
映画「TENET(テネット)」の主要キャスト紹介
映画『TENET』は、主要キャスト陣もとても魅力的です。こちらのキャスト紹介では、主に主人公の「名もなき男」や、悪役の「セイター」など、メインキャストと彼らの関連作などについてご紹介します。
映画『TENET』で気になる俳優がいた場合は、関連作もぜひご覧ください。
主人公/名もなき男:ジョン・デイビッド・ワシントン
第三次世界大戦を防ぐべく、【TENET】のキーワードをめぐるミッションに巻き込まれる。
スパイク・リー監督の『ブラック・クランズマン』(18/製作:ジェイソン・ブラム、ジョーダン・ピール)で主役を演じ、アダム・ドライバー、ローラ・ハリアーと共演した。カンヌ国際映画祭でプレミア上映された同作は、スタンディングオベーションを受け、グランプリを受賞。
さらにロン・ストールワース役を演じた自身は、ゴールデングローブ賞と全米映画俳優組合(SAG)賞の最優秀主演男優賞ノミネート獲得をはじめ、2019年度の賞レースシーズン中に、数々の賞にノミネートされた。
1992年、スパイク・リー監督の『マルコムX』で子役として映画デビューしており、俳優になる以前は、プロのアメリカンフットボール選手として6年間活動していた。
ニール:ロバート・パティンソン
名もなき男の任務遂行を手助けする優秀なエージェント。相棒として一緒に旅をする。
19歳のとき、『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』で、三大魔法学校対抗試合の正式なホグワーツ代表選手になるセドリック・ディゴリーを演じ注目を集めた。その後、『トワイライト・サーガ』シリーズのバンパイア、エドワード・カレン役で有名となる。2020年初頭から、マット・リーブス監督の『The Batman』の撮影に参加。象徴的な二役ブルース・ウェイン/バットマンを演じている。この作品は、21年10月1日全米公開予定。
キャット:エリザベス・デビッキ
セイターの妻で一児の母。美術品の鑑定士。セイターの秘密を知るものの、彼から離れられない理由がある。
舞台・映画で活躍するオーストラリア人女優。2013年、バズ・ラーマン監督の称賛を浴びた映画『華麗なるギャッツビー』で頭角を現し、瞬く間に世間の注目を集めるように。2017年、マーベル製作の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』で、悪役のアイーシャを演じた。ほか出演作に、ガイ・リッチー監督の『コードネーム U.N.C.L.E.』などがある。
セイター:ケネス・ブラナー
天然ガスで富を築いたとされているが裏の顔は武器商人。未来と現在を繋ぐ役割を持つ謎の悪人。
世界中で最も定評のあるフィルムメーカー/俳優のひとりとして知られる。
クリストファー・ノーラン監督とは、『ダンケルク』(17)で主役陣のひとりであるボルトン中佐役を演じ、コラボレート。
待機作に2017年の『オリエント急行殺人事件』の続編で、アガサ・クリスティの傑作ミステリー小説シリーズ『ナイル殺人事件』がある。同作でエルキュール・ポアロ役を再演し、監督も務めている。
まとめ
映画『TENET』を見た感想と、見る前に知っておきたい予備知識についてのまとめです。
映画『TENET』は、斬新な映像やストーリーが「非常に面白い」作品でした。
特殊な設定の映画であるため、一度で理解するのが難しい作品ですが、予めこの記事で紹介したポイントを押さえておくだけで、より作品を楽しめると思います!
映画「テネット」の予備知識をおさらいすると、
- 【TENET】というキーワードだけで、いくつもの解釈がある
- ストーリーは王道のスパイ映画だが、「時間の逆行」など難解なSF要素を含む
- 「時間の逆行」は逆再生のような映像として描かれていている
- CGなしの実写で撮影されている
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